骨粗鬆症
〜骨折をしない強い骨をつくる〜


骨粗鬆症とは
骨粗鬆症になると・・・
手足の骨折は転んで生じる!!
転ばないために
転んでも折れない骨にしましょう
7種類の骨粗鬆症治療薬



骨粗鬆症とは

年を取ることや閉経を迎えたことに加えて、食事でのカルシウム摂取不足や運動不足などが原因となって、骨のカルシウム量が減少し、骨がスポンジのように粗くなり骨折しやすくなる病気が骨粗鬆症です。閉経後の女性や、高年齢に発症しやすい骨粗鬆症では、ちょっとしたことで骨折が生じ、それが引き金となって体の具合が悪くなり、ときには寝たきりになってしまうこともあります。 骨粗鬆症とは


なぜ骨のカルシウム量が減ってしまうのか?

骨は20〜30代でもっとも丈夫になりますが、その後年とともに弱くなっていきます。これは老化に伴い、骨を作る細胞の働きが弱まったり、刺激を与える運動量が減ったりすることのほか、腸管からのカルシウムの吸収を助ける活性型ビタミンDが不足し、カルシウムの吸収が低下することも骨のカルシウム量不足の原因になり、骨を弱くするのです。
カルシウムの吸収のしくみ


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骨粗鬆症になると


骨粗鬆症になると、初期の段階では背骨や腰骨がつぶれて、身長が低くなったり、背中や腰が丸くなり、またその部位に痛みが生じたりするだけですが、病気が進んできますと手足に骨折が生じます。従って、骨粗鬆症と診断された場合は、骨のカルシウム量を増やすとともに、転んで骨折することを防ぐことが大切です。なぜなら転倒による骨折が高齢者の寝たきりの大きな原因の1つになっているからです。
骨粗鬆症で生じやすい骨折
背骨・腰骨の骨折
腕のつけ根の骨折
大腿のつけ根の骨折
手首の骨折




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手足の骨折は転んでも生じる


骨粗鬆症の骨はもともと折れやすいのですが、原因もなく折れてしまう骨は背骨・腰骨ぐらいで、手足の骨はほとんどの場合、転倒により折れるのです。

●転んで打ちつける部位によって骨折型が決まる●

多くの人は転ぶ際に手のひらか肘をつく、または膝やお尻をつきます。手のひらをつきますと手首の骨折が生じ、肘をつきますと肩近くの腕のつけ根に骨折が生じます。膝やお尻をつきますと大腿のつけ根に骨折が生じ、このタイプの骨折ではたって歩けなくなるため、ほとんどの人は入院が必要となります。
手首の骨折
手首の骨折
腕のつけ根の骨折
腕のつけ根の骨折


●転んで骨折したら・・・病院に行くまでの注意●

手のひらをついて転んだ場合は手首が骨折し、手首から指にかけては大きなフォークのような形に変形します。この骨折では痛みを覚えますが皮下出血は多くありません。受診までは肘から手のひら全体を動かさないように固定すると痛みが少なくなり楽になります。

肘をついて倒れ、腕のつけ根の骨折を生じますと、肩全体が横方向に広がり、皮下出血と腫れ、痛みがみられます。肘〜二の腕を布で吊るなどして痛みを少なくして受診しましょう。

お尻や膝をついたり、大腿を捻るなどして、大腿のつけ根に痛みが走ったり、立てない、歩けない場合には大腿のつけ根の骨折が疑われます。仰向きに寝かせて観察しますと傷む側の足が外を向いて短くなっている、大腿のつけ根が横方向に広がっているなどを認めます。この場合には抱えたり、車椅子に乗せたりして手厚く介助しながら医療機関に連れて行ってください。

骨折と診断されたときは

手足の骨折ではレントゲン写真の詳しい観察により診断され、治療法が決められます。
手首の骨折では強く引っ張るなどして、手首の変形を治したあと、ギブス固定や副え木を当てて治療します。4週間前後にギブスをはずせますが、その間、外来通院で治す方が体が弱まりません。

腕のつけ根の骨折に対しては、腕から手首までをギブスでまき、ギブスの重りで引っ張りながら治す治療法が選ばれます。固定後6週間前後でギブスを外せますが、その間外来通院で治療していると常に骨折部を下方に引っ張った状態を保てますので治療効果が上がります。

大腿骨のつけ根の骨折は入院を要しますが、入院期間が長びいて、体力が弱っていくのを防ぐためにも手術が必要になります。骨折部を釘でつないだり、人工の骨に入れ替えたりするなど、骨折のタイプによって手術の方法が異なります。手術後は先生の許可が得られ次第、立つ歩くといったリハビリを積極的に始めることが大切です。手術後2ヶ月以内に力をつけて退院する人が多いようです。

大腿のつけ根の骨折の治療法

頸部外転骨折 頸部内転骨折 転子部骨折
頸部外転骨折 頸部内転骨折 転子部骨折
【保存療法】 【人工骨頭置換術】 【骨接合術】
保存療法 人工骨頭置換術 骨接合術

骨折後に回復したあとも積極的なリハビリを

高齢になって経験する大けが、骨折は大きな精神的ショックを与え、その後は訓練や、歩くのが怖くなるため積極的な生き方をしなくなる人がいます。手足の骨折は命に関係することはありませんが、体の動きを低下させがちとなりますので、もう一度勇気をふるいおこすことが大切です。上肢の骨折は多少の痛みがあっても歩きながら治し、関節が固くなれば温め、よく動かして治しましょう。下肢の骨折については医療機関で習った歩く能力を低下させないよう、その後もよく動きましょう。このようにして骨折後は、毎日“リハビリテーションの心”を持ちながら過ごすことと、“杖”などを使う安全策の2つが大切です。



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転ばないために

手足の骨折の約8割は転倒が原因
寝たきりの原因ともなる高齢者のあしの骨折は、骨粗鬆症患者さんが、ちょっと転んだだけでも生じることが多いようです。高齢者は歩行能力や、注意力が低下していて転びやすくなっています。このことから高齢者自身も家族の方も転ばないための注意を払うことにより、手足の骨折の約半分は防げると言われています。

夜から朝にかけてが要注意!!
転倒防止には夜の10時から朝までの睡眠時間帯や早朝の起床時での注意がとくに大切です。これは寝起きや夜間にトイレに行くときに転んでしまうことが多いためです。また転倒の約70%はふらついた、すべった、つまずいたのいずれかといった些細な原因によって生じています。

適度な運動を心がけましょう
高齢者では足腰が弱くなり、転びやすくなっています。散歩などの適度な運動を通して、背中をのばし、あしの筋力が衰えないように努めましょう。

自分にあった転ばぬ先の杖
転びやすい高齢者や骨折を経験した高齢者には杖の使用をおすすめします。杖は使いやすく、自分の背丈にあわせたものを用いて、転倒の防止に役立てましょう。

服装は動きやすいものを選びましょう
和服、すその長い服、ぞうりやヒールの高い靴は足をとられやすいので避けましょう。手足を動かしやすいように、楽な身づくろいをしましょう。

段差や溝は注意
ほんの数センチの段差や溝も転倒の原因となります。家の中の段差を少なくする様に気をくばりましょう。また、下が透けて見える階段も、目もくらむような構造、高低差がわかりにくい段差なども要注意です。

家の中を整理・整頓
床に広げた新聞に滑ったり、電気コードなど思わぬものに足をとられて倒れてしまうことがあります。部屋の中はきれいに掃除をして余計な物を置かないように整理しましょう。

滑り止めや、てすりをつける
てすりを廊下・階段・トイレ・風呂場にしかっりと、取り付けましょう。フローリングの廊下には大きなカーペットを、階段には滑り止めをつけましょう。

照明は明るく
薄暗いところではちょっとした段差にも足をとられることがあります。特に玄関などの段差があるところには、足元に明かりがあったほうがいいでしょう。

薬には注意
睡眠薬や降圧剤など、薬によっては、眠気を催すものもあります。薬で眠気やめまい・ふらつきを起こすようなら、主治医や薬剤師の先生に相談してみましょう。

転びやすい病気
パーキンソン病や脳卒中、精神活動性の低下状態など転びやすい病気があります。転びやすい病気の人は本人自身が転倒傾向やふらつきなどに注意して生活をすると共に、家族の方の気配りも必要になります。



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転んでも折れない骨に



【食事】

骨折なしで高齢期を生き生きと過ごすためには転ばないことと転んでも折れない骨にすることが大切です。ここでは折れにくい丈夫な骨にするコツを説明します。丈夫な骨にするには血液中にカルシウムをたくさん取り込み、それを骨へ呼び寄せなければなりません。このためには、まず第一に食べ物でしっかりとカルシウムを取って血液へカルシウムを送り込む必要があります。
転んでも折れない骨に
平成8年度の国民栄養調査では、男女とも50・60歳代の日本人は必要なカルシウム量をとっていますが、70歳以上の人達は不足気味です。しかし丈夫な骨にするために、いずれの年齢の人達もさらに1日に200rのカルシウムを追加して取ってほしいものです。
ところで、中高年齢者はいくつかの成人病にかかっている人も少なくありません。ここでは、骨粗鬆症と合併して病気にかかっている場合の効率良いカルシウム摂取方法についても説明します。


合併症のみられない人の食事

乳製品
牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品にはカルシウムがたっぷりと含まれ、しかも約半分は体内に取り込まれるほど吸収率が良いのです。高齢の方でも約94%の人は牛乳を飲めることが分かっていますが、牛乳を飲むと下痢気味になる人は、ヨーグルトにしたり、牛乳を温めて少量から飲むなどの工夫をして下さい。


小魚類
骨ごと食べられる小魚や干し海老はカルシウムをたくさん含んでいます。腸管からの吸収率は約30%と低いのですが、他のミネラルも多く含み、健康食の代表と言えます。“ママの味”では忘れられがちな煮干しや目刺を使った食事メニューで、ダイエット効果を図りながらカルシウムをたっぷり取るようにしてはいかがですか。


海藻類
海水には血液の4倍ものカルシウムが含まれており、そこで育った海藻類にはカルシウムを始めミネラルが沢山含まれています。おにぎりののりやお味噌汁のカワメだけでは海藻類を十分に取れませんので、サラダや煮物・酢の物などの海藻中心の料理を1品食べるのも海藻をたくさん取るコツと言えます。


野菜類
野菜の中でも緑色の濃い野菜、緑黄色野菜にはカルシウムがたっぷりと含まれています。春菊や大根の葉にもカルシウムが豊富ですが、とりわけ小松菜にはたくさん含まれており、小松菜のお浸しを1皿食べますと牛乳1本分のカルシウムを取るのに相当するくらいです。野菜中のカルシウムについては、体内への吸収率はやや低めですが、チリメンキャベツは吸収率が高いとの報告もあり、種類により異なります。他の栄養素やビタミンのことを考えますと緑黄色野菜はたくさん取りたい食べ物と言えます。


大豆製品
豆腐やがんもどき、納豆などの大豆製品にはカルシウムがたくさん含まれています。豆腐なら2/3丁、大きめのがんもどきなら1個、納豆2パックなどに含まれているカルシウム量は牛乳1本分に相当します。これらはいずれもカロリーが低く、カルシウムが豊富といった特徴がありますので、カルシウムを取りたいが太りたくない人にはピッタリです。ゴマにもたくさんのカルシウムが含まれており、ゴマだれやゴマ豆腐もおすすめです。
合併症のみられない人の食事
合併症を起こしている人の食事

高血圧
全国には高血圧の人が640万人もおられますので、骨粗鬆症を治すためにカルシウムを取りたいが、高血圧も心配といった人も相当おられます。高血圧の人には腎臓の働きの低下や、肥満、塩分の取り過ぎなどがみられますので、カルシウムを取る際に塩分を控える、高カロリー食にしないなどの配慮が必要です。

乳製品では低脂肪牛乳や低脂肪ヨーグルト、カッテージチーズなどが低カロリー食と言えます。小魚や海藻類はカロリーが低いのですが塩味が濃くなっていないかのチェックが大切です。
カルシウムをたくさん取っている人の血圧は低いここが分かっていますので、カルシウムをたっぷりと取るのは高血圧にも良いのです。
合併症を起こしている人の食事
高脂血症
血液中にコレステロールが多く含まれ、それが動脈に沈着すると高血圧・狭心症・心筋梗塞・脳卒中の原因となります。従って、高脂血症の人はとくにカロリーや脂肪のとりすぎに注意しなければなりません。そのためには、野菜類や小魚類、豆製品などからカルシウムをたくさん取ることをおすすめします。

牛乳はカルシウムが多いが、コレステロールも多いのではとけ円敬遠される人が多いと聞きます。しかし、骨を強くするため27名の方に牛乳を1年間飲んでいただいたところ血液中総コレステロール値が上昇したのは遺伝的な高脂血症の人1人のみとの報告もあります。牛乳1本(200ml.)には卵1個の1/10、うなぎ蒲焼1串の1/12しかコレステロールを含まないので、必要以上に警戒することはありません。心配な人は低脂肪牛乳やカッテージチーズを活用してカルシウムをたっぷり取ってください。


糖尿病
糖尿病は日本全国に157万人の患者さんがおられ、骨粗鬆症と合併することの多い病気です。体重を減らさなければならないのにカルシウムをたっぷり取るのは難しいと思われるでしょうが、緑黄色野菜、小魚類、海藻類などのカルシウムが豊富なのに糖分が少なく、低カロリーといった食品がたくさんあります。これらを数多く食べ、ダイエットによる低栄養、低カルシウム摂取に陥らないように気をつけて下さい。

運動

食事でカルシウムをたくさん取ることも必要ですが、それを骨に沈着させるには骨に対する負荷・運動が必要であることがはっきりと分かっています。
骨に圧迫力が加わりますと骨にはカルシウムを呼びよせる電気が発生し、また血液の流れが良くなり骨を作る細胞を活躍させます。骨のカルシウム量を減らさずに、丈夫に保っておくならば毎日合計8000歩歩く運動量で十分です。楽しい散歩、少し足を伸ばしてのショッピング、戸外で活発に働くなど楽しみながら適度に運動ができるような生活を送りましょう。年齢に関係なく運動は骨を強くします。



日光浴
食べ物で取ったカルシウムの約70%はそのまま体外に出ていきます。このようにカルシウムは吸収率が低い栄養素ですが、この吸収率を高めるのがビタミンDです。ビタミンDは腸管に働いて食べ物中のカルシウムをどんどんと血液に送り込むほか、骨の細胞に働いて代謝を活発にします。ビタミンDはシイタケやエノキ茸などの植物にも含まれていますが、鯖、鮪、鰹などの背の青い魚にも多く含まれています。これらを食べ物で取っても血液中のビタミンDを増やすことができますが、日光浴でも同じように血液中のビタミンDを増やせるのです。

私たちの皮下脂肪にはビタミンDの基になるコレステロールの仲間が含まれており、その量は小指を3時間太陽に当てるだけで1日に必要なビタミンDが作られるほど多いのです。ですから、骨を強くするための日光浴は、夏なら木陰で30分、冬なら顔や手に太陽を当てて1時間も歩けば十分と言えます。戸外で日光に浴びることは運動にもつながりますし、食欲増進にも役立ちます。


お薬
骨を強くし、骨折しにくくする薬が次々と登場してきています。薬の服用と運動・食事・日光浴からなる日常生活とを車の両輪のようにして働かせ、骨を強くしていきましょう。

骨粗鬆症治療薬は1週間、2週間の内服で効果が現れるものではありません。半年〜1年毎に骨のカルシウム量や骨のレントゲン写真を調べてもらいながら薬の服用を続ける必要があります。当初の痛みがとれても、次の痛みを生じさせないように薬の服用を根気よく続けましょう。


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7種類の骨粗鬆症治療薬

病院で処方される骨粗鬆症を治す薬には次のように大きく7つに分けることができます。
先生や薬剤師さんに服用方法をよく聞いてください。
【活性型ビタミンD剤】
食べ物中のカルシウムの体内への吸収を助け、骨の代謝を活発にして、骨を強くし骨折率を低下させます。副作用として血液中のカルシウム量が増え過ぎてしまうことがありますので、カルシウム剤を買って飲んでいる人は医師に報告しましょう。

【カルシトニン製剤】
骨からカルシウムが溶け出すのをおさえる作用と痛みを軽くする作用のある注射液で、周に1〜2回注射されます。副作用として吐気やのぼせ、顔面紅潮などをみることがあります。

【ビタミンK製剤】
納豆などに含まれるビタミンKを薬にしたものです。骨の形成を促しますので、骨代謝が低下している場合に適しています。ただし、ワルファリンという薬を飲んでいる人には使えません。

【イプリフラバン製剤】
馬や牛が食べて早く成長する牧草、アメリカウマゴヤシの抽出物です。比較的緩やかに骨を作り、カルシウムが溶け出すのを抑えます。副作用として胃腸障害の生じることがあります。

【ビスフォスフォネート製剤】
骨が溶けるのを強力に抑える作用のある薬です。3ヵ月間に2週間内服するだけで、骨のカルシウム量を増やし、骨折率を低下させます。食べ物中のカルシウムはこの薬と結合して、変化させてしまいますので食事と食事との間に内服するようにします。

【エストロゲン製剤】
女性ホルモン剤は骨を作り、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える」ほか、女性らしさを保たせます。副作用として性器出血、乳房痛がみられることがあります。乳がんや子宮ガンを経験した人は必ず先生にお話ください。

【カルシウム剤】
食事で不足しがちなカルシウムを補うのが目的です。先生からカルシウム剤を処方されている場合は、さらに自分で買って飲むのは服用量が多くなり過ぎますので避けましょう。副作用としては胃腸障害や便秘などをみることがあります。

お薬を飲む時の注意

副作用が無くて好く効く理想の薬を求めての研究は続けられています。しかし、体によく効く薬は、希望する作用も希望しない副作用も強いのが一般的です。薬を服用していて何か変だなと思えば必ず先生に相談してください。何ヶ月間か使用して、やっと効果のはっきり分かる骨粗鬆症治療薬でも副作用は素早く現れることがあるからです。

骨粗鬆症治療薬はその効き方によって薬の服用方法が異なります。1日の服用回数から始まって、食事と食事との間に服用するもの、ワルファリンを服用しているときは絶対服用できないもの、3ヶ月のうちはじめの2週間だけ服用するものなど様々です。よく説明をきいて、納得した上で薬の服用を始めましょう。
引用文献:「骨粗鬆症ハンドブック」杏林製薬株式会社